◎経過観察問題の最新記事(2018.4.13)は以下の通り。
【速報】【経過観察問題(4)】国破れて記憶あり、で症例数を隠ぺいする被告福島県にはこれを開示する説明責任がある(2018.4.13)
◎「福島で子どもたちの健康を脅威にさらした責任を負う者は、ハーグで現在、責任を問われているアフリカやアジアの指導者らと同じ道を歩むべきである」(原告準備書面(5)第5、山下発言問題)
以下は、2017年5月から何度か取り上げてきた福島県の甲状腺検査の経過観察問題をまとめたものです。
2017年3月末、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」(以下、子ども基金と略称)の会見で、福島県は県民健康調査の甲状腺検査(その枠組みは末尾の図参照)の二次検査(※1)で「経過観察」とされた子ども(単純合計で)2523人(2017年2月20日現在。その内訳は末尾の図参照)は、その後「悪性ないし悪性疑い」が発見されても、その数を公表していなかった事実が、つまり福島県が公表した患者数(2017年3月末時点で190人)以外にも未公表の患者がいる(※2)ことが明らかになりました。
(※1)二次検査:超音波による一次検査でのう胞 20.1mm以上/結節 5.1mm以上の判定だった子どもを対象に行なう、詳細な超音波検査、血液検査などの精密検査。
(※2) 子ども基金が会見で明らかにした未公表の患者は、福島県の甲状腺検査の二次検査の結果、「経過観察」とされたが、その後、穿刺細胞診で悪性の疑いがあると診断され、2016年、福島県立医大で甲状腺の摘出手術を終えた原発事故当時4歳の男児。
福島県によれば、 2巡目(第1回目本格検査)の甲状腺検査で「悪性ないし悪性疑い」の判定となった69人のうち実に63名が1巡目(先行検査)で、A判定とされ「経過観察」とされた者です(2017年2月20日検討委員会の資料5頁)。とすれば、A判定とは異なり、もともと精密検査の必要があるとして二次検査を実施した者のうちひとまず「経過観察」となった2,523人の中から、子ども基金が把握する「原発事故当時4歳の男児1名」以外にも悪性腫瘍が発見される可能性がどれほどの数にのぼるのか見当がつきません。
これは極めて重大な問題です。低線量被ばくによる子どもたちの健康被害の危険性を問う「子ども脱被ばく裁判」にとっても極めて重要な問題ですので、2017年5月、この裁判の原告は被告福島県に対し、速やかに、その症例数を明らかにするように裁判で主張しました(→その書面)。本来、「県民の健康を守る」ことを使命とする被告福島県にとって、これは当然開示すべき情報だからです。
しかし、被告福島県は、 雨が降ろうが槍が降ろうが、どんなことが起きても、県民健康調査の甲状腺検査で「経過観察」となった2523人の子どものうち「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を明らかにすることは決して、ぜったいしないという不退転の決意を示し、現在までその態度を変えていません。
それは被告福島県は「県民の健康を守らない」という不退転の決意を自ら示すものです。
なぜなら、被告福島県は、まず、
①. 福島県は 『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない。
と回答してきました(→その書面)。 そこで、これに対し、原告から次の2つの再質問をしました。
質問1:
(1)、症例の数の把握について、被告福島県はこれを把握する義務があると考えているのか?
(2)、原告は、福島県にはこの義務があると考え、その根拠を示したので、これに対しても応答せよ。
質問2: 甲状腺検査で「経過観察」となった子どものうち、他の病院はともかく、福島県立医大付属病院で「悪性ないし悪性疑い」が発見された数は福島県は把握しているだろうから、せめてこれだけでも明らかにして欲しい。
これに対し、被告福島県は次の回答をしました。
②.(質問1に対し)
(1)、福島県に、症例数を把握する義務はない。
(2)、福島県は、《福島県に症例数を把握する義務がある》とする原告主張とその根拠を全面的に争う。ただし、福島県にこの義務がないとする根拠を示す必要はない(説明する責任はない) (→その書面5頁下から3行目~6頁)。
③.(質問2に対し)
福島県は、これを調査し、明らかにする余地はない(→その書面3頁)。
さらに、原告質問1と一緒に、原告は次の質問をしました。
質問3: 鈴木眞一福島県立医大教授と山下俊一長崎大学副学長率いる長崎大学が提携して進める研究プロジェクト(※3)が上記の症例数を把握しているから、福島県も当然、症例数を把握しているのではないか。
(※3)2013年12月頃からスタートした、福島県立医大甲状腺内分泌学講座の主任教授鈴木眞一を研究責任者として、山下俊一長崎大学副学長率いる長崎大学と連携しながら、福島県内の18歳以下の小児甲状腺がん患者の症例データベースを構築し、同がん患者の手術サンプル及び同サンプルから抽出したゲノムDNA、cDNAを長期にわたって保管・管理する「組織バンク」を整備する研究プロジェクトのこと。この研究プロジェクトを記載した2つの研究計画書(甲C73・同74)や研究成果報告書(甲C75)
これに対し、被告福島県は以下の回答をしました。
④.福島県と鈴木眞一教授らの研究グループとは別の組織、別の主体であり、福島県はこの研究グループとは何の関わりもない。それゆえ、この研究グループがどんな社会的使命を持ち、どんな目的で、どんな研究をしているか、福島県は知るよしもない。だから、この研究グループが症例数を把握していたとしても、福島県はこれを知るよしもない(→その書面2頁。第1、2)。
以上の回答から、 被告福島県は「県民の健康を守らない」という不退転の決意を示していることが明らかです。これが福島県の姿です。日本は今これほどまでに壊れています。
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この経過観察問題の詳細は、以下を参照。
◎経過観察問題(1):福島県は、《『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない》と答弁(2017年8月8日子ども脱被ばく裁判)。->こちら
◎経過観察問題(2):福島県は、《求釈明の対象を福島県立医大付属病院における症例に限定した場合であっても、被告福島県において本訴訟における求釈明に対する対応として調査し、明らかにする余地はない。》と答弁(2017年10月18日子ども脱被ばく裁判)->こちら
◎経過観察問題(3):福島県は、《福島県に県民健康調査の甲状腺検査で「経過観察」となった2523人の子どものうち「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を明らかにする義務もなければ、症例数を把握する鈴木眞一教授らの研究プロジェクトとも関わりはない》と答弁(2018年1月22日子ども脱被ばく裁判)
->こちら
◎関連記事「184人以外にも未公表の甲状腺がん〜事故当時4歳も」(Ourplanet-TV 2017.3.20)
「存在していた!福島医科大『甲状腺がんデータベース』」(Ourplanet-TV 2017.8.30)
福島県民健康調査の甲状腺検査のスキーム(枠組み)
甲状腺検査の二次検査で「経過観察」とされた者の数
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