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2019年10月25日金曜日

【速報】【山下・鈴木証人尋問6】鈴木眞一氏の証人尋問の事実上のスタート。彼の陳述書作成に向け原告から質問書を提出(2019.10.23)

10月23日付「質問項目に関する上申書誤記と論文名の追記があったので訂正の上申書2を提出。以下の記載も訂正した(2019.10.31
10月23日付「質問項目に関する上申書に3箇所、誤記があったので訂正の上申書を提出。以下の記載も訂正した(2019.10.28)
同書面の質問項目中に引用した証拠を本日、裁判所に提出(詳細は->こちら)。以下の記載の各証拠にもリンクを貼った(2019.10.28)

2015年5月まで、 福島県の甲状腺検査の実施主体である福島県立医科大学の検査責任者だった
鈴木眞一氏

 

10月1日証人尋問がスタートした福島地裁の「子ども脱被ばく裁判」、この日の証人尋問に先立つ進行協議の場で、裁判所は、次の通り述べた。
・鈴木眞一氏を証人として採用する必要性・重要性は否定できない。
・ただし、普通に証人尋問をやっても真相解明に貢献する有益な尋問になるとは限らない。
・そこで、実りある尋問を実現するためにどういう工夫が必要か、裁判所がこの間検討してきた結果、事前に次のQ&Aを準備することを提案したい。
①.原告から、あらかじめ、鈴木氏に尋問する質問の一覧(これがQ&A)を書き出す。
②.それに基づいて、被告福島県は、鈴木氏の陳述書(これがQ&A)を提出。
③.このQ&Aに基づいて、本番の証人尋問を実施。

この①の「質問項目一覧表」の提出期限が本日1月23日。
原告は、本日、以下の質問書を提出(全文のPDFは->こちら)。

原告としては、本番の鈴木証人の尋問を実りあるものにするため、本番の尋問にとって前提となる事実関係漏れがないように、今回の質問書にすべて盛り込んだ積りだ。 
それはおそらく、彼が答えたくない質問のてんこ盛り。
今度は、この質問書に基づいて鈴木氏が陳述書を作成する番。
さて、鈴木氏はこのてんこ盛りにどんな回答をして、陳述書作成してくるか。

このやり取りはいわば書面による、事実上の証人尋問。
質問出され、 鈴木証人尋問の幕は切って落とされた。

質問書の目次と各項目で引用された証拠
1、 証人の経歴、専門
2、「福島県民健康調査の甲状腺検査」(以下、「甲状腺検査」という)
(1)、甲状腺がんの基礎知識と甲状腺腫瘍診療ガイドラインについて
 「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」と2010年版
(2)、原発事故直後の対応について
 「安定ヨウ素剤飲んでいた 福島県立医大 医師たちの偽りの“安全宣言”」(FRIDAY2014年3月7日号
(3)、「甲状腺検査」の目的と責任者の責任者の責務
 医大作成の「実施計画書(案)『ふくしま健康調査(仮称)』」(抜粋)
 証人の論文「検診発見での甲状腺癌の取り扱い 手術の適応」(乙B46
(4)、「甲状腺検査」の検査スキームについて
 証人が主任研究者を務めた研究「県民健康管理調査の一貫としての福島県居住小児に対する甲状腺検査」の研究計画書
(5)、検査結果の報告について
 第8回「県民健康管理調査」検討委員会の「甲状腺検査の配布資料
 第10回「県民健康管理調査」検討委員会の「甲状腺検査の配布資料
 第11回「県民健康管理調査」検討委員会の「甲状腺検査の配布資料
(6)、「甲状腺検査」に対する関与(2015年~)
 医大の放射線医学県民健康管理センターの甲状腺専門委員会の中の「診断基準等検討部会
 放射線医学県民健康管理センターの甲状腺専門委員会の中の「病理診断コンセンサス会議
(7)、手術症例について 
 第8回甲状腺評価部会の提出資料「手術の適応症例について」(証人)
 第10回甲状腺検査評価部会の提出資料「日本の若年者甲状腺癌乳頭癌の臨床像と臨床経過について ―文献の紹介― 」(吉田明)
(8)、アクティブサーベランス(非手術経過観察) 
 証人の研究発表「甲状腺2 甲状腺癌の超音波によるサーベイランス(アクティブサーベイランスを含む)」〔日本超音波医学会第91回学術集会
(9)、再発について
2019年10月の日本甲状腺学会で、証人2018年9月までに11人の再発を発表。
(10)、転移と新設のアイソトープ(RI)施設について
2019年10月の日本甲状腺学会で、2017年1月から2年間に「RI施設」でのべ58人が治療を受けたと報告。
(11)、「甲状腺検査」の集計外症例について
2019年の日本甲状腺学会で、証人が2018年12月末までに行った180人の手術症例について報告
 第34回「県民健康調査」検討委員会で、2018年12月末までの手術症例168人を報告。
証人が筆頭著者の
小児における甲状腺癌の超音波所見」(内分泌甲状腺外会誌34)

(12)、症例データベースについて
 2013年、証人が研究責任者を務め、甲状腺がんの症例データベースを構築する「小児甲状腺癌の分子生物的特性の解明」(受付番号1909)の研究計画書
人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2014.12.22文科省・厚労省)

(13)、組織バンクについて
 
イギリスのジェリー・トーマス教授主宰の「チェルノブイリ甲状腺組織銀行プロジェクト」(←紹介文
 2013年、証人が研究責任者を務め、組織バンクを構築する若年者甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」(受付番号1897)の研究計画書
  長崎大学原爆後障害医療研究所の光武範吏准教授ら論文「福島の若年層の甲状腺がんではBRAF (V600E)変異が高頻度である:チェルノブイリとは異なる発がんプロファイル」(2015年11月20日Scientific Reports掲載。以下、光武論文という原文日本語概要
(14)、「甲状腺検査」の結果に対する見通し 
 証人の論文「検診発見での甲状腺癌の取り扱い 手術の適応71頁左段21行目以下
(15)、「甲状腺検査」の結果に対する評価:全般
 証人の論文「検診発見での甲状腺癌の取り扱い 手術の適応75頁
(16)、「甲状腺検査」結果に対する評価:多発について
 「県民健康調査」検討委員会の高野徹委員の「芽細胞発癌説
 第4回「甲状腺検査評価部会」の提出資料「福島県における甲状腺がん有病者数の推計」(津金昌一郎)

(17)、「甲状腺検査」結果に対する評価:多発以外の問題
小児甲状腺癌の分子生物的特性の解明」(受付番号1909)の研究計画書4~5頁「7研究の背景及び目的」
 
第57回日本甲状腺学会学術集会」の証人の抄録
3、説明責任と取材対応について
 2015年3月、「甲状腺検査」の「検査の責任者」を退いた後も、証人が出席する「甲状腺検査」の「診断基準等検討部会」「病理診断コンセンサス会議」

    ***************
平成26年(行ウ)第8号ほか
原告  原告1-1ほか
被告  国ほか
2019年10月23日
福島地方裁判所民事部 御中        

原告ら訴訟代理人 弁護士  柳 原  敏 夫
ほか18名  
  
鈴木眞一証人(以下、鈴木証人という)に対する個別具体的な質問項目は、次頁以下の通りである。なお、質問がいくぶん多岐に渡った理由は、専ら、本番での鈴木証人に対する尋問を実効性あるものにするため、尋問の前提となる事実関係(甲状腺検査の基本的事実、甲状腺がんの基本的事実など)について漏れのないよう把握することに努めた結果である。
また、質問項目中に記載の甲C99~102号証の各書証は速やかに提出する予定である。

1、 証人の経歴、専門
 証人の甲状腺の専門医としての経歴について説明して下さい。

2、「福島県民健康調査の甲状腺検査」(以下、「甲状腺検査」という)
(1)、甲状腺がんの基礎知識と甲状腺腫瘍診療ガイドラインについて
ア、 甲状腺とはどのような器官ですか。どのような場所にあり、どのくらいの大きさで、どのような性質を持つのですか。
イ、甲状腺がんとはどのような病気で、どのような人に多い病気ですか。
ウ、甲状腺がん学会が作成した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」とは何ですか。
エ、原発事故前の2010年版において、証人はガイドライン作成にどのように関与しましたか。
オ、原発事故後の2018年版において、証人はガイドライン作成にどのように関与しましたか。
カ、 証人は、2010年の「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」10頁(甲C99)において、甲状腺腫瘍の危険因子、とりわけ小児の危険因子について、放射線被曝が第一に記載されていましたが、その根拠(エビデンス)を知っていましたか。

(2)、原発事故直後の対応について
ア、原発事故後、福島医科大学(以下、医大という)では3月11日以降、ヨウ素剤の配布を決め、福島県から4000錠以上のヨウ素剤(ヨウ化カリウム丸50㎎)を入手しましたが、この決定の経緯を説明して下さい。
イ、医大では1号機が水素爆発した3月12日からヨウ素剤を配り始め、院内の各科に1000錠単位で配布したという内部資料が残っています(桐島瞬「安定ヨウ素剤飲んでいた 福島県立医大 医師たちの偽りの“安全宣言”」(FRIDAY2014年3月7日号34~35頁)参照)。証人はこの配布にどのように関与しましたか。
ウ、院内でのヨウ素配布について、箝口令が敷かれていたと報道されています。事実ですか。
エ、福島県は、県民に対してヨウ素剤を配布しませんでした。この判断をしたのは誰ですか。
オ、同じく、配布しないと決定した理由は何ですか。
カ、 証人は当時、配布すべきだと考えていましたか。
キ、県民がヨウ素剤を配布されず服用しなかったことと、原発事故当時18歳以下の県民から甲状腺がんが多発したこととの関連性について、証人はどのように考えていますか、結論と理由を説明して下さい。

(3)、「甲状腺検査」の目的と責任者の責任者の責務
ア、県民健康調査は、福島県から医大に委託された業務ですか。
イ、医大は県民健康調査業務をどのような体制で実施していますか。その体制の中で放射線医学県民健康管理センターはどのような役割を果していますか。
ウ、県民健康調査業務の委託により福島県から医大に提供される業務委託費は、医大の放射線医学県民健康管理センターが所管する検査事業や人件費に充てられるものですか。
エ、医大の「実施計画書(案)」という表題の資料(甲C100)によると、2011年5月の段階で、すでに福島県の小児全員を対象にした「甲状腺検査」を実施する方針が決められています。証人は、いつから、どのように、「甲状腺検査」の検討に関与しましたか。
オ、証人は2011年10月の第4回「県民健康管理調査」検討委員会まで、つまり第1回から第3回までの検討委員会には出席していません。この間、証人は「甲状腺検査」についてどのような役割、仕事をしていましたか。
カ、証人の論文(乙B46。以下、本論文という)71頁左段19~21行目に記載の通り、証人は「甲状腺検査」のスタート時(2011年10月)、「甲状腺検査」の実施主体である医大の「検査の責任者」でしたか。
キ、「検査の責任者」の役割、仕事とはどのようなことですか。

(4)、「甲状腺検査」の検査スキームについて
ア、「甲状腺検査」において、なぜ、原発事故当時18歳以下の福島県の小児全員に「甲状腺のエコー検査(超音波検査)をすることにしたのですか。
イ、 「甲状腺検査」のエコー検査は、チェルノブイリでエコー検査の実績のある山下俊一医大現副学長の指導のもとに開始されたのですか。
ウ、エコー検査は、チェルノブイリで実践した内容をモデルにしていますか。
エ、「甲状腺検査」はどのような検査か、具体的に説明してください。
オ、 「甲状腺検査」によって、どのようなことを解明しようとしていましたか。
カ、 当初の計画では、会津地方を、対照地域にしようと計画していましたか。
キ、 「甲状腺検査」の開始当初、証人が主任研究者を務めた研究「県民健康管理調査の一貫としての福島県居住小児に対する甲状腺検査」の研究計画書(受付番号1318。甲C101)4頁「7、研究背景及び目的」)には、「超音波検査で数%の甲状腺結節を認めることが予想されます。しかし、小児甲状腺がんは年間100万人あたり1,2人程度と極めて少なく、結節の大半は良性のものです」と記載されていますが、証人は当時このように考えていたのですか。

(5)、検査結果の報告について
ア、証人は2011年10月の第4回「県民健康管理調査」検討委員会から2015年2月の第18回「県民健康調査」検討委員会まで、「甲状腺検査」の「検査の責任者」として検討委員会に出席し、検査結果を報告していました。この間、「検査の責任者」としてどのような役割、仕事をしていましたか。
イ、この間、証人は、検討委員会に対して、どのような内容を報告していましたか。
ウ、証人は2012年9月、第8回「県民健康管理調査」検討委員会で、甲状腺がんと診断された1例を口頭で報告しています。しかし、当日の配布資料に、二次検査で陽性だったケースすなわち細胞診で悪性だった患者数は記載されていませんでした。なぜですか
エ、 証人は2013年2月、第10回「県民健康管理調査」検討委員会で、10人の甲状腺がんの悪性ないし悪性疑いが見つかり、手術を終えた3人が甲状腺がんと確定したことを口頭で報告しています。しかし、マスメディアからも求められていたにも関わらず、この時も、当日の配布資料には甲状腺がんに関する人数が記載されていませんでした。なぜですか。
オ、2013年6月の第11回「県民健康管理調査」検討委員会以降、当日の配布資料に甲状腺がんの人数が記載されるようになりました。なぜですか。

(6)、「甲状腺検査」に対する関与(2015年~)
ア、証人は、2015年4月以降、「甲状腺検査」の「検査の責任者」を退任しましたか。その理由は何ですか。
イ、 このとき、「検査の責任者」の後任者は誰でしたか。
ウ、「検査の責任者」は、現在は誰が担当していますか。
エ、後任のこの2人の「検査の責任者」は甲状腺がんの専門家ですか。
オ、後任の2人は甲状腺内科医ですが、甲状腺がんの診断や治療において、甲状腺内科医と甲状腺外科の専門医である証人とどこに違いがありますか。
カ、 証人は、「検査の責任者」を退任した2015年5月以降、医大において、どのような役割を担ってきましたか。医大付属病院以外の病院にも勤務していますか(勤務先の名称を説明して下さい)
キ、証人は現在、「甲状腺検査」には全く関与していませんか。
ク、証人は、医大の放射線医学県民健康管理センターの甲状腺専門委員会の中の「診断基準等検討部会」には出席しています。ここでは何を話合っていましたか。
ケ、この「診断基準等検討部会」は2018年8月を最後に開催されていません。なぜですか。
コ、証人は、放射線医学県民健康管理センターの甲状腺専門委員会の中の「病理診断コンセンサス会議」にも出席しています。これはどのような会議ですか。
サ、「病理診断コンセンサス会議」は、二次検査の穿刺細胞診だけでなく、手術で摘出した腫瘍の病理細胞を検討することもあるのですか。

(7)、手術症例について
ア、証人は医大付属病院、いわきの福島労災病院、会津の会津中央病院で、小児・若年の甲状腺がん患者を診ていますが、それぞれの病院で、1日平均何人くらいの小児・若年の甲状腺がん患者を診ていますか。
イ、県民健康調査の二次検査で甲状腺がんの疑いと診断され、医大付属病院に紹介される患者は各年度ごとに何人ですか。
ウ、証人はこのうち何人の患者を診察してきましたか(各年度ごとにお答え下さい)。
エ、ウの甲状腺がんの疑いのある患者に対して、どのような検査を行なって、最終的に手術を判断しますか。
オ、証人はイの医大付属病院に紹介される患者の手術全てに関与していますか。
カ、イの患者について証人が行ってきた甲状腺がんの手術は、甲状腺がん学会が作成した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」に沿っていますか。
キ、「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」のどのような基準でカの手術をしているか具体的に説明して下さい。
ク、本論文(乙B46)76頁左段10~11行目で、証人は、微小がんについて「現行の診断基準で微小がんでも非手術的経過観察を勧めない理由があるもの」すなわち微小がんであっても「手術の必要がある(手術適応)」と認められるものが26%に及んでいると指摘しています。この理由の具体的内容(例えばリンパ節転移(N)や皮膜外浸潤(EX))を説明して下さい。
ケ、証人が報告した、2017年11月の第8回甲状腺評価部会資料「手術の適応症例について」などによれば、手術前と手術後で、甲状腺がんの評価(TNM分類等)を比べると、手術後の評価のほうがリンパ節転移(N)や皮膜外浸潤(EX))の割合が多いとしています。証人が扱っている小児・若年の甲状腺がん患者全症例の傾向について教えてください。
コ、リンパ節転移(N)や皮膜外浸潤(EX)のある患者を手術しない場合、どのようなことが起きますか。
サ、証人に対して「必要のない手術をしている」という批判がありますが、証人が手術を実施した症例について、もし手術しなかった場合、どのようなことが起こり得ると思いますか。
シ、甲状腺がんは20~30年以上経ってから再発するケースもあると言われていますが、それは事実ですか。
ス、証人は、甲状腺がんと診断された患者について、何年間、経過観察すべきだと考えますか。
セ、原発事故後、10代、20代で甲状腺がんの手術を受けた福島の子どもたちも40歳~50歳まで経過観察が必要と考えますか。
ソ、甲状腺がんの5年、10年生存率は何%程度ですか。
タ、2018年7月の第10回甲状腺検査評価部会の提出資料「日本の若年者甲状腺癌乳頭癌の臨床像と臨床経過について ―文献の紹介― 」(甲C102)に野口病院、隈病院、伊藤病院という甲状腺がんの治療で著名な病院の報告が紹介されており、それによると、小児甲状腺がんが原因でなくなった原病死がわずかとはいえ0.9~2.1%あります。小児で甲状腺がんを発症したケースでも、100人に1~2人死亡する可能性があるという理解で間違いないですか。
チ、未分化転化とは何のことか、説明して下さい。

(8)、アクティブサーベランス(非手術経過観察)
ア、医大では、小児でも「非手術経過観察=アクティブサーベランス」すなわち、悪性と疑われる腫瘍がありながら、経過観察を続けている患者がいると検討委員会や学会で報告しています(証人の研究発表「甲状腺2 甲状腺癌の超音波によるサーベイランス(アクティブサーベイランスを含む)」〔日本超音波医学会第91回学術集会〕)。どのような小児の患者が「非手術経過観察=アクティブサーベランス」の対象となっているのですか。
イ、「非手術経過観察=アクティブサーベランス」については、成人の患者ではよく適用されていますが、小児・若年層の患者では先例がありません。証人は小児・若年層の場合、これをどのように適用していますか。また、小児・若年層の患者に対し、これをどのように説明していますか。
ウ、 医大で、小児・若年層の患者の「非手術経過観察=アクティブサーベランス」を実施し始めたのはいつですか。
エ、 医大では、これまで何人の小児・若年の甲状腺がん患者に対して、「非手術経過観察=アクティブサーベランス」を実施してきましたか?
オ、エの実施例の中で、「非手術経過観察=アクティブサーベランス」をしているうちに手術適用となった患者はいますか。いる場合、何人いますか。
 
(9)、再発について
ア、証人は、2019年10月の日本甲状腺学会で2018年9月までに甲状腺ガン手術を施行した178人のうち、11人に再発が認められたと発表しています。これらの症例に証人は関与していますか。
イ、 証人は、アの再発患者に対して、どのような措置を行いましたか。
ウ、アの再発例は、全摘患者からは一人もなく、全て半摘(葉切除)患者から見つかっています。甲状腺がんはおとなしい癌なので、とってしまえば大丈夫と強調されていますが、短期間に、これほど沢山、再発するものなのですか。
エ、アの再発例は、どのような理由で再発しましたか。
オ、アの再発例のうち、半年や1~2年の短期間で再発した患者もいますか。
カ、証人は、オの短期間での再発について、「両側性」、すなわち甲状腺の右葉と左葉の両方同時に悪性腫瘍が発症する甲状腺がんの可能性があると考えていますか。
キ、「両側性」の甲状腺がんはどのようなケースに発症しますか。

(10)、転移と新設のアイソトープ(RI)施設について
ア、「甲状腺検査」で見つかった甲状腺がん患者の中に、手術後、肺転移したケースはありますか。ある場合、何例ありますか。
イ、アの肺転移したケースに証人はどういう立場で関与しましたか。肺転移の割合、肺転移の状況、肺転移に対する措置及びその後の経過について、証人が知っていることを説明して下さい
ウ、2016年12月、国際医療研究センター「ふくしま いのちと未来のメディカルセンター」が竣工しました。この4階に日本最大の10床を有するアイソトープ(RI)施設(以下、「RI施設」という)が新設されました。「RI施設」はどのような治療をする施設か、具体的に説明して下さい。
エ、原発事故前、医大にはアイソトープ(RI)治療の専門医がいませんでした。2016年になぜ、医大に日本最大の「RI施設」ができたのか教えてください。
オ、2019年10月の日本甲状腺学会において、2017年1月から2018年12月までに2年間に、「RI施設」でのべ58人(男性24人、女性34人)が治療を受けたという報告がありました。このうち、原発事故当時18歳以下の患者は何人いますか。

(11)、「甲状腺検査」の集計外症例について
ア、証人は、2019年の日本内分泌学会、乳腺甲状腺超音波医学会、日本甲状腺学会で、2018年12月末までに行った180人の手術症例について報告しましたか。
イ、「甲状腺検査」の二次検査で経過観察とされた子どもたちが、その後の診療で甲状腺がんと診断され、手術した場合(以下、本事例という)、「集計外」として、「県民健康調査」検討委員会等に報告されていません。2019年4月の第34回「県民健康調査」検討委員会では、アと同じ2018年12月末までの手術数を報告されましたが、その人数は168人です。従って、アで報告した180人の手術症例との差12人が「集計外」の症例と考えて間違いないですか。間違っていたら、正しい「集計外」の症例数を説明して下さい。
ウ、イの12人のうち、少なくとも2人が原発事故当時4歳だったことが、民間団体の調査で分かっています。これに間違いありませんか。
エ、証人が医大付属病院及びそれ以外の病院で行った手術の中に本事例に該当するものがありますか。あれば、各病院ごとに症例数を教えて下さい。また、その具体的内容を説明して下さい。
オ、証人らは、「小児における甲状腺癌の超音波所見」(内分泌甲状腺外会誌34)で小児の場合,細胞診が限定的になりやすく,主腫瘍の診断はしても,周囲への診断をすべて細胞診で行うことが困難な年代もある。」と述べています。この記載は、小児の患者については頻繁に穿刺細胞診できないことを言っているのでしょうか。
カ、「甲状腺検査」の2巡目、3巡目、4巡目の検査で甲状腺がんと判定された子どもたちがその2年前の前回検査のときB判定だった子どもは極めて少なく、殆どがA判定の子どもです。つまり、わずかな期間に1センチないし3.5センチの甲状腺がんを発症しています。証人が「甲状腺検査」と無関係に、一般診療で診察した患者の中で、3ヶ月や半年といった短期間に、腫瘍が数ミリ単位で徐々に増大した患者はいますか。いる場合、その年齢と人数を教えて下さい。
キ、証人が「甲状腺検査」を担当していた時期には、医大付属病院以外の病院で執刀した症例も、検討委員会で報告されていました。その当時報告できたことが今は報告できなくなっていますが、なぜだと思いますか。

(12)、症例データベースについて
ア、証人は2013年、「小児甲状腺癌の分子生物的特性の解明」(受付番号1909)という研究の研究責任者になっています。この研究計画書(甲C73の2)を書いたのは誰ですか。
イ、アの研究計画書(甲C73の2)には、甲状腺がんの症例データベースを構築すると記載されています。なぜこのデータベースを構築したのか理由を教えてください。
ウ、アの研究症例データベース以外に、福島原発事故後に福島県内で発生した小児甲状腺がんの症例データベースを構築しているところはありますか。
エ、証人は2013年、「若年者甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」(受付番号1897)というヒトゲノム・遺伝子解析研究の研究責任者になっています。この研究計画書(甲C74)を書いたのは誰ですか。
オ、証人が2019年、内分泌学会等で発表した180例の小児甲状腺がんの手術症例は、イの症例データベースを利用して解析を行いましたか。
カ、アの研究は、県民健康調査を背景に構築されています。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以下、「医学系指針」という)に基づけば、アの研究結果は県民健康調査に参加した県民、少なくとも甲状腺がんの患者に報告すべきだと思います。なぜこれらの研究結果を県民健康調査に参加した県民に、甲状腺がんの患者にすら報告していないのか、その理由を教えてください。

(13)、組織バンクについて
ア、前記(12)エの研究(受付番号1897)の研究計画書(甲C74)では、県民健康調査で見つかった小児甲状腺がん患者から摘出した腫瘍および正常細胞の組織やDNA等を一元的に保管・管理する組織バンクを構築すると記載しています。なぜこの組織バンクを構築したのか理由を教えてください。
イ、アの組織バンクは、イギリスのロンドン大学インペリアルカレッジの病理学教室ジェリー・トーマス教授が主宰してきた甲状腺がん組織と、その情報を管理する「チェルノブイリ甲状腺組織銀行プロジェクト」をモデルにしているのですか。
ウ、アの組織バンクは長崎大学に置かれ、解析が行われています。なぜ福島県で見つかった甲状腺がん患者の細胞を集積する組織バンクを遠く離れた長崎大学に置くことになったのですか。
エ、前記(12)エの研究計画書(甲C74)によると、当初、前記(12)アとエの研究の主任研究者だった医大の福島俊彦准教授(当時)はBRAF解析など、ゲノム解析で実績があったと記載されています。にもかかわらず、なぜ、長崎大学の研究者を優先したのか教えてください。
オ、前記(12)エの研究成果はどのような形で、発表されていますか。
カ、前記(12)エの研究成果である論文「福島の若年層の甲状腺がんではBRAF (V600E)変異が高頻度である:チェルノブイリとは異なる発がんプロファイル」(2015年11月20日Scientific Reports掲載。以下、光武論文という原文日本語概要)の筆頭著者が医大の研究者ではないのはなぜですか。
キ、医大で甲状腺がんの手術をした場合、摘出した組織は病理診断を行うと思いますが、病理診断に使用する組織と、長崎大学の組織バンクに保管する試料をどのように分割し、長崎大学に提供する組織は、どのように保存し、どのように輸送していますか。
ク、前記(12)アの研究計画書(甲C73の2)に以下のように書かれた、「協力病院からの手術サンプル及び医療情報の提供」という次の取組みの実施状況はどうでしたか、最新の情報で説明して下さい。
研究期間内に当施設および協力施設に受診・入院した手術適応となる18歳以下の甲状腺癌患者のうち、研究参加の同意が得られたもの。‥‥協力病院については、対象者が発生した際に、計画変更申請にて、別個に追加する。》(下線は原告代理人。「8 対象者の選定」25~29行目)
ケ、前記(12)エの研究(受付番号1897)は、ヒトゲノム研究です。医学系指針に基づけば、研究結果は患者に報告しなければなりませんが、前記(12)エの研究では、なぜ甲状腺がんの患者に研究結果を伝えていないのか、その理由を教えてください。

(14)、「甲状腺検査」の結果に対する見通し
ア、「甲状腺検査」の先行検査の開始時点(2011年10月)で、検査の結果に対してどんな見通しを持っていましたか。先行したチェルノブイリの小児甲状腺がんの発症を元にした見通しを持っていたのではないですか。
イ、本論文71頁左段21行目以下で、証人は「検診開始以前からの筆者の講演スライドでは以下のように説明している」と述べていますが、
(ア)、「検診開始以前」とはいつの時期のことですか。福島原発事故以前の時期も含みますか。
(イ)、「筆者の講演」の一例を、いつ、どこで、どういう表題で、誰を対象にした講演でしたか、説明して下さい。
ウ、証人の講演スライドの説明として、本論文71頁左段26~28行目で、「今まで施行していなかった検診を行うと、ゆっくり育つ甲状腺腫瘍が無症状の早い時期に多く発見されることは容易に想像がつく」と記載されていますが、
(ア)、この文を記載した講演スライドの原文を陳述書の別紙として添付していただけますか。
(イ)、「集団の検診を行うと、甲状腺腫瘍が多く発見される」ことが容易に想像がつくと証人が考えた根拠を説明して下さい。
(ウ)、その当時、証人は、集団の検診を行うと、多く発見される「甲状腺腫瘍」とは「治療の必要のない無害ながん」と考えていたのでしょうか、それとも「手術の必要がある(手術適応)」がんと考えていたのでしょうか。その根拠も示して説明して下さい。

(15)、「甲状腺検査」の結果に対する評価:全般
ア、先行検査の終了時点(2014年3月)で、検査の結果に対する評価はどうでしたか。先行したチェルノブイリの小児甲状腺がんの発症と比較してどうでしたか。
イ、「甲状腺検査」で判明した甲状腺がんと福島原発事故による被ばくとの関連について、証人は本論文75頁で、チェルノブイリ事故と比較するにあたって、両者の相違点に着目し、これを主な理由にして被ばくと小児甲状腺がんとの関係を否定的に見ています。他方で、福島とチェルノブイリの間には「男女比」や「リンパ節転移や肺転移の割合」など重要な共通点があり、これらの共通点についてどう考えますか、証人の見解を説明して下さい。
ウ、福島原発事故による被ばくと小児甲状腺がんの関係を否定的に考えるのでしたら、では、年間100万人に1~2人といわれる小児甲状腺がんが、6年間の累計で約38万人で少なくとも272人[1](年間100万人あたりで119人)も多発した福島県において、何がこの多発の原因と考えますか、証人の見解(結論とその根拠)を説明して下さい。

(16)、「甲状腺検査」結果に対する評価:多発について
ア、先行検査では、106人が甲状腺悪性ないし悪性と診断され、102名が甲状腺がん手術をしています。また2回目の検査では71人が悪性と診断され、51人が甲状腺手術を受けています。証人は、「甲状腺検査」で実施された甲状腺がんの手術に対して、「治療の必要のない無害ながん」の手術を行ったという批判(過剰診断論)に対してどう考えていますか。
イ、「過剰診断論」の以下の批判に対して、証人の見解を説明して下さい。
①.「県民健康調査」検討委員会の高野徹委員の「芽細胞発癌説
②.近年、甲状腺の超音波検査導入により多数の微小がんが見つかった結果甲状腺がんの手術数が急増したが、にもかかわらず甲状腺がんの死亡率は低下しないという韓国の事例を論拠にする見解。
ウ、「甲状腺検査」の結果等を評価する「県民健康調査」検討委員会に設置された「甲状腺検査評価部会」は、2014年11月の第4回会合で、国立がん研究センターの津金昌一郎部門長が「福島県における甲状腺がん有病者数の推計」を提出し、その中で2001-2010 年のがん罹患率(全国推計値)に基づくと、男性90倍、女性52倍、両性で61倍となる推計した上で、「今回の検査がなければ、1~数年後に臨床診断されたであろう甲状腺がんを早期に診断したことによる上乗せ(いわゆるスクリーニング効果)だけで解釈することは困難である。」と述べています。つまり、一般にスクリーニング効果は多くて3倍程度であって、数十倍も多くがんが見つかっている今回の甲状腺がんはもはや「スクリーニング効果」では説明がつかないということですが、証人もこれに同意されますか。
エ、ウで津金氏は、通常より数十倍もの甲状腺がんが見つかっているのは、スクリーニング効果では説明がつかないため、「何らかの要因に基づく過剰発生か、将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを多数診断している(過剰診断)かのいずれかと思われる。」と述べています。証人はこの2つのどちらだと思いますか。

(17)、「甲状腺検査」結果に対する評価:多発以外の問題
ア、臨床的に発見される甲状腺がんは1対6程度で女性の多い傾向があるとされていますが、県民健康調査で見つかった甲状腺がんの男女比は1対1に近づいています。検討委員会委員の清水一雄元委員や吉田明委員は非常に特異なことだと疑問を呈しています。証人はどう思いますか。
イ、ベラルーシの甲状腺専門医・故デミチク氏は、チェルノブイリの経験に基づき、男女比の問題をあげており、検討委員会でもこれまで度々疑問視されてきました。医大では、これについて議論をしたことはありますか。あったなら、どんな議論をしたのか、具体的に説明して下さい。
ウ、医大で手術した甲状腺がん患者から摘出した細胞を分析した、山下俊一教授の弟子筋の長崎大学原爆後障害医療研究所の光武範吏准教授らは光武論文で、チェルノブイリの小児甲状腺がんがRET/PTC3変異が多かったが、福島県で見つかっている小児甲状腺がんのゲノム解析結果は、BRAFと呼ばれる遺伝子異常が多いと発表しています。このRET/PTC3変異は被ばく影響によって生じるというエビデンスはありますか。あったなら、具体的に示して下さい。
エ、証人は、学会等で、福島県の小児甲状腺がんにBRAF変異が多いことを理由に、被ばくとの因果関係が考えにくいとする内容を発表しています。一方、受付番号1909の研究計画書甲C73の2)4~5頁「7研究の背景及び目的」には、RET/PTC3変異は必ずしも被ばく影響ではなく、放射線の影響のない小児の甲状腺がんにおいてもRET/PTC3変異の頻度が高いことが報告されていると記載されています。これに間違いありませんか。
オ、 第57回日本甲状腺学会学術集会」の抄録
この差異のみをもって、放射線影響の有無を判断するのは早計である。
という証人の記載があります。
この記載は「チェルノブイリと福島での小児甲状腺がんの遺伝子変異のパターンの差異のみをもって、放射線影響の有無を判断するのは早計である」という意味ですか。そして、その認識は現在も変わらないですか。
エ、欧米の研究では、BRAF変異の患者は予後が悪いという研究が多数ありますが、証人もそのことを知っておられますか。

3、説明責任と取材対応について
ア、県民健康調査の「甲状腺検査」は検査に参加した県民のみならず全国民にとっても原発事故による健康影響を判断する上で重大な関心事であり、「甲状腺検査」を実施する者は検査結果について必要かつ十分な説明をする責任を負っています。
 証人は、2015年3月、「甲状腺検査」の「検査の責任者」を退いた後も、引き続き「甲状腺検査」の「診断基準等検討部会」「病理診断コンセンサス会議」に出席して「甲状腺検査」の重要な業務を担当していながら、2015年3月以降、「甲状腺検査」や甲状腺がんについて一度もマスメディア等の取材に応じていません。なぜですか。
イ、証人は、学会等で発表する際も、一切、録音や撮影を許していないだけでなく、学会発表に対するメディアの質問にも答えないそうですが、なぜですか。
ウ、証人は、2015年3月以降の甲状腺がんをめぐる臨床の状況について、メディア等に話をしないように言われていますか。
エ、証人は、甲状腺がんの問題についてメールや電話などでの問い合わせについて、個人の判断で返信しないように言われていますか。
オ、医大は過去、マスメディアから「甲状腺検査」について不本意な報道がなされるたびに、ホームページなどを通じて反論をしてきました(「平成25年4月22日の毎日新聞報道について」「NHKスペシャル『38万人の甲状腺検査~被ばくの不安とどう向き合うのか』について」)。しかし、証人の甲状腺がんの診断や治療が「過剰診断」や「過剰診療」と報道されても、医大は全く反論していません。なぜだと思いますか。
カ、医大の放射線医学県民健康管理センター甲状腺検査室の緑川早苗氏は、出前講座で、治療の必要ないがんを見つける可能性があるので、自分の子どもには、甲状腺検査を受けさせないと述べています。医大では、緑川氏のような考え方が主流なのですか。
以 上



[1] 原告準備書面(69)――経過観察問題(続き4)・サポート事業問題について――参照

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