2019年2月22日金曜日

【報告】【経過観察問題(8)】2018年暮れの福島県議会の福島県の答弁で甲状腺検査サポート事業から推理できる小児甲状腺がんの症例数273人は検討委員会公表の症例数より少なくとも74人多いという桁違いのズレが判明(2019.2.20)

経過観察問題のこれまでの報告
【経過観察問題のまとめ】被告福島県と甲状腺検査の経過観察問題(2018.1.28)
【速報】【経過観察問題(4)】国破れて記憶あり、で症例数を隠ぺいする被告福島県にはこれを開示する説明責任がある(2018.4.13)
【速報】【経過観察問題(5)】「被告福島県に経過観察中に発症した数を開示する説明責任がある」か否かに答弁しないという答弁をした福島県(2018.7.10)
【報告1】【経過観察問題(6)】経過観察問題の真相解明の意義を再確認した上で県立医大と鈴木眞一チームに症例数の回答を求める調査嘱託の申立を行ないました(2018.10.16)
【報告】【経過観察問題(7)】経過観察問題の真相解明の求めて、裁判所から県立医大と鈴木眞一チームに症例数に関する質問に対し、ゼロ回答を(2018.12.5) 

原告は、2018年12月13日配信のOurPlanetTVの記事「小児甲状腺がん少なくとも273人〜福島サポート事業で判明」に基づき、
2018年12月13日の福島県議会で福島県の答弁により、県民健康調査甲状腺検査サポート事業で、2018年3月末時点で少なくとも273人の小児甲状腺がん患者がいることが判明し、同時期の検討委員会公表の症例数より少なくとも74人多いというと桁違いのズレがあることが判明した事実を指摘し、
これだけ桁違いに大きいズレを、がん発症の深刻な現状を把握しておらず、それゆえ、県民健康調査の目的である《県民の健康状態を把握し、その現状把握により《疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ること》というミッションを全く果しておらず、機能不全と信用失墜に陥っている被告福島県に対し、信頼回復のため、改めて、小児甲状腺がんの症例数について、被告福島県に情報開示を求めるもので、
この間、原告が一貫して主張している経過観察問題の続きです。

以上の主張をしたのが原告準備書面(69)――経過観察問題(続き4)・サポート事業問題について――です。そのPDFは -->こちら 

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平成26年(行ウ)第8号ほか
原告  原告1-1ほか
被告  国ほか
準備書面(69)
――経過観察問題(続き4)・サポート事業問題について――
201 2 8
福島地方裁判所民事部 御中        

原告ら訴訟代理人   柳 原  敏 夫
ほか18名  
 
本書面は、昨年12月13日、福島県議会での答弁により、県民健康調査甲状腺検査サポート事業で判明した小児甲状腺がんの症例数が検討委員会公表の症例数と桁違いの差があることから、改めて、小児甲状腺がんの症例数について、情報開示を求める、経過観察問題の続き4である。
目 次

第1、サポート事業で少なくとも273人の小児甲状腺がん判明

1、県民健康調査甲状腺検査サポート事業の概要

 被告福島県は、2015年7月、《県民健康調査甲状腺検査後に生じた経済的負担に対して支援を行うとともに、保険診療に係る診療情報を県民健康調査の基礎資料として活用させていただき、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ること》[1]を目的として、対象者に医療費を交付する県民健康調査甲状腺検査サポート事業[2](以下、甲状腺検査サポート事業と略称)をスタートさせた。毎年3月、その事業実施状況が公表され、昨年3月までに甲状腺検査サポート事業で医療費を受給した患者の数(以下、支援金交付人数という)は233人に達した。

2、医療費を受給した患者の甲状腺疾患の内訳

昨年12月13日、福島県議会福祉公安委員会で、甲状腺検査サポート事業の支援金交付人数の総数233人の甲状腺疾患の内訳を質問されたのに対し、県民健康調査課の鈴木陽一課長は「全て甲状腺がんということで、82件は手術症例の実人数」と答弁した(以下の画像参照)。
(甲B156OurPlanetTVの配信記事中の動画[3]より)

 ちなみに、この82件とは、被告福島県が昨年3月に公表した事業実施状況によれば、支援金交付人数233人のうち甲状腺がん等の手術の医療費を受給した患者の数のことである(甲B156OurPlanetTV20181214日配信記事「小児甲状腺がん少なくとも273人〜福島サポート事業で判明」記載の以下の表2手術事例状況参照)。

3、県民健康調査課の鈴木陽一課長答弁の意味

 鈴木陽一課長の上記答弁は次のことを意味する。
第1に、福島県ホームページの甲状腺検査サポート事業Q&A(甲B157)のQ8で明らかにしている通り、もともと支援の対象となる甲状腺疾患は小児甲状腺がんに限定され、それ以外の甲状腺疾患は対象とならない。従って、甲状腺検査サポート事業の支援金交付人数の総数233人の甲状腺疾患の内訳が「全て甲状腺がん」というのは当然のことを述べたまでである。
第2に、全て甲状腺がんの233人のうち、甲状腺がん手術の医療費を受給した患者が82名にとどまったということは、残りの甲状腺がん患者151人は甲状腺がん手術の医療費を受給していないことを意味する。では、この151人は甲状腺がん患者でありながら、なぜ手術の医療費を受給していないのか。ひとつの理由は、甲状腺検査サポート事業に申請する時点で、既に甲状腺がん手術を終えていたからである(甲状腺がん手術の時点で18歳未満なら、福島県は医療費が無料であり、甲状腺検査サポート事業を申請しようにも申請資格がない)。或いは甲状腺がん手術前だが、穿刺細胞診で甲状腺がんの悪性又は悪性疑いが判明しているからと考えられる。
 そこで、「18歳未満は甲状腺検査サポート事業の申請資格がない」ことに着目すれば、次の事実を推認できる。
第3に、①.既に甲状腺がん手術を終えているが、昨年3月時点で18歳未満の者、②.既に穿刺細胞診で甲状腺がんの悪性又は悪性疑いが判明しまだ甲状腺がん手術前だが昨年3月時点で18歳未満の者、①と②はいずれも甲状腺検査サポート事業の申請資格がないため、233人にカウントされていない。そこで、この①と②の人数を公表データから算出したのがOurPlanetTVの配信記事(甲B156)の以下の表である。


すわなち、この計算によれば、昨年3月までに甲状腺がんと診断された(甲状腺検査サポート事業の申請資格がない)18歳以下の者は46人にのぼる。 
さらに、「生活保護や避難指示区域で医療費減免の公的制度の受給者は甲状腺検査サポート事業の申請資格がない」ことに着目すれば、次の事実を推認できる。
第4に、①.既に甲状腺がん手術を終えているが、昨年3月時点で18歳以上で、かつ生活保護等の公的制度の受給者、②.既に穿刺細胞診で甲状腺がんの悪性又は悪性疑いが判明しまだ甲状腺がん手術前だが昨年3月時点で18歳以上で、生活保護等の公的制度の受給者、①と②はいずれも甲状腺検査サポート事業の申請資格がないため、233人にカウントされていないし、第3の46人にもカウントされていない。しかし、公開データからはこの数を算出する方法がないため、この数がどれほどになるのか、原告には不明である。
 以上の考察から、昨年3月時点で小児甲状腺がん患者は、少なくとも233人+46人=279人となる。ただし、手術後の病理診断でがんではなかった患者(検討委員会で公表された「良性結節1名」及び甲状腺検査サポート事業の報告で発表された濾胞性腺腫等の5名)を除くと、少なくとも273名となる。
 この数字は、検討委員会が昨年6月18日に公表した昨年3月30日時点の悪性及び悪性疑いの合計199名より少なくとも74人も多いという桁違いに大きいズレである。

4、公表データより少なくとも74人多いがん症例数が求めるもの

 原告はこれまで何度に及び、被告福島県に対し、甲状腺検査の経過観察問題で症例数を開示し説明責任を果たすように求めてきたのに対し、被告福島県は、
①.「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数は把握していない。
②.この症例数を把握すべき理由もない。
③.よって、説明責任があるか否かについても認否する必要がなく、応答しない。
の旨の答弁(準備書面(15)等)をくり返すばかりで、説明責任を果たし、症例数を開示することを全くしてこなかった。こうした開き直りの答弁が可能だったのは、ひとえに「経過観察」中に発見された「悪性ないし悪性疑い」の症例数が明るみにされなかったからである。
 しかし、そのような開き直りはもはや不可能となった。なぜなら、今回、思いがけずも、甲状腺検査サポート事業のデータから県民健康調査検討委員会のデータの信頼性が根底から揺らいだからである。それは甲状腺検査サポート事業が明るみにした数字が、小児甲状腺がん症例数は県民健康調査検討委員会の公表データより「少なくとも74人」も多いという桁違いに大きいズレであった。これだけの数字のズレは、県民健康調査検討委員会が、もはや小児甲状腺がん発症の深刻な現状を把握しておらず、それゆえ、県民健康調査の目的である《県民の健康状態を把握》[4]し、その現状把握により《疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ること》というミッション全く果していないことを意味するものであった。
 従って、このような機能不全と信用失墜に陥った県民健康調査検討委員会は、信頼回復のために、速やかに、なぜ「少なくとも74人」もの桁違いのズレが生じているのか、甲状腺検査サポート事業のデータと突合を行い、その原因解明を果し、その調査結果を速やかに原告ら及び県民に説明し、自ら説明責任を果す必要がある[5]
 同時にそれは、県民健康調査検討委員会のもう1つの盲点をも明るみにした。それが「経過観察」中に発見された「悪性ないし悪性疑い」の症例数は実は、県民健康調査検討委員会の公表データよりずっと大きいのではないかというこの間ずっと続いている疑いである。なぜなら、甲状腺検査サポート事業で自ら県民の健康状態の現状把握能力の喪失を露呈した以上、経過観察問題でも同様の能力喪失を疑われても当然だからである。それゆえ、ここでも県民健康調査検討委員会(被告福島県)が取るべき道は明白である。すなわち、信頼回復のために、「経過観察」中の子どもらが通院する福島県立医大及び病院に速やかに問い合わせし、収集した情報により、小児甲状腺がん症例数の実態を把握し、その調査結果を原告ら及び県民に説明し、自らの説明責任を果することである

第2、求釈明

 本書面の原告主張に対する認否と重なる部分もあるが、本書面で指摘した問題は県民健康調査検討委員会の機能不全と信用失墜をあらわす極めて深刻な問題であるので、被告福島県に対し、次の事実について明らかにするよう求める。
①.昨年12月13日、福島県議会で行った県民健康調査課の鈴木陽一課長の「甲状腺検査サポート事業の支援金交付人数の総数233人の甲状腺疾患は全て甲状腺がんである」旨の答弁について、その答弁内容で事実に間違いないか。
②.上記①がもし間違っているとしたら、何が正しい事実か、及びなぜ間違った答弁をしたのか。
③.支援金交付人数の総数233人のうち甲状腺がん手術の医療費支援を受けた患者82名を除いた151人について、どのような甲状腺疾患の履歴があったのかそのデータを明らかにされたい。具体的には、申請以前に甲状腺がん手術をした人数、申請以前に穿刺細胞診で甲状腺がんの悪性又は悪性疑いが判明した人数など。
④.今後、甲状腺検査サポート事業のデータについて、少なくとも県民健康調査検討委員会が行っている情報開示と同程度の情報開示をすべきであると考えるが、これを実行する意思はあるか。
⑤.小児甲状腺がんの発症数で「少なくとも74人」のズレが発生した原因を解明し、今後、このようなズレの発生防止のため、県民健康調査検討委員会のデータと甲状腺検査サポート事業のデータを突合を行い、その調査結果を原告ら及び県民に説明するか。
⑥.「経過観察」中に発見された「悪性ないし悪性疑い」の症例数を把握するため、「経過観察」中の子どもらが通院する福島県立医大及び病院に問い合わせし、小児甲状腺がん症例数の実態を把握し、その調査結果を原告ら及び県民に説明するか。
以 上


[1] 福島県ホームページの「県民健康調査甲状腺検査サポート事業について」1 事業目的 http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kojyosen-support.html#8
[2]ただし、他の公的制度(県や市町村が実施する「こどもの医療費助成事業」、「生活保護」等)により医療費の全額助成を受けている方は対象にならない。福島県は18歳以下の子どもの医療費を無料にしているので、18歳以下については甲状腺検査サポート事業の対象とならない。
[3] https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=XY0ws4Xl6FI
[4] 福島県立医大のホームページhttp://fukushima-mimamori.jp/outline/
[5] それはまた、被告福島県が甲状腺検査サポート事業の目的として掲げた以下の「県民健康調査との連携」の当然の帰結である。
《保険診療に係る診療情報を県民健康調査の基礎資料として活用させていただき、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ることとしています。》(県民健康調査甲状腺検査サポート事業について「1 事業目的」(甲B157))

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